白蛇

珍しく三日連続で雪が降る。
温暖化なんていうのが嘘のようだが、
嘘なのかもしれないし、そうでないのかもしれない。


ダイナミックな大気の流れは統計的な分析手段で推し量れば
多少の乱数の乱れも収束するように考えるのは所詮、
人間という生き物のスケールが小さいからだ。
何億年というスケールの中の数百年がコンマ数%あったかいほうにぶれたり
寒いほうにぶれたり、すれば南極の大地も見えたり隠れたりするだろう。


だから、起こっている事を何かの傾向であるとか、性質であるとか
そういうことに還元する事はやめよう。


ただ、寒い。
ひたすらに寒い。
考えることをやめると確かに回転していたものがとまり
そこから発生する摩擦熱もとまってしまう。


風が交差点をゆうゆうと吹き抜ける。
そう分かるのは、雪がうねりながら地面を這っていくからだ。
蛇のように、右に左にうねりながら進む。


蛇はどれくらいかけてあの進み方を覚えるのだろう。
理屈は分かっても僕はそんな風に進めない。
僕が蛇に生まれ変わったら、果たして生きていけるのだろうか。


は虫類の寿命はそう長くないだろう。
その中で蛇の歩み方を覚えた頃合いに、僕は死ぬのか。
いや、できればせめて、その這い進むやり口だけでも、
こつを掴んで次の蛇に生まれ変わる人間たちに教えてやらねば。


信号がまた赤に戻ろうと点滅を始めている。
たとえ、ここでつまづいて死んで、蛇になっても
僕は人間のままだろうな。
襟を立てて駅へと走る。