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部屋に入ってそのことを彼女に告げたところ
そんなのあったっけ、とのたまう。


挙げ句に今日は仕事見つかったか、とすでに時候の挨拶めいたことを言う。
相手のほうからは時候の挨拶程度の気楽さであるのに、
いまだにこれに対する適当な挨拶が見当たらない。


「やぁ、今日はなんとか目処がつきそうだよ」
とか言ってみたいが、それでは何回目処がついたところで決まるのだろう。


正直なところ、もはや直接お目にかかって第一印象のみで選んでしまったほうが早いのだろうが
直接お目にかからなくても分かる情報が多すぎて、
そこに行く前にできる準備をしようと思っているうちに、その会社ではダメなような気がしてしまう。
その会社がダメというわけでもないが、その会社である理由がどんどん不鮮明になっていく。


帰りにあの花のことを思い出してその場所に行ってみると、
咲いていることは咲いていたが、確かに彼女が部屋に行く通り道とは少しはずれた位置にある。
彼女の部屋の近くとだけ覚えていたのが仇になったか。